部下と職場を変える3つのステップ

前回は、マネジメントが「既存システムの継続」であるのに対し、リーダーシップは「組織の変革」であり、部下の内なるエネルギーに火をつける後天的なスキルであることをお伝えしました。


しかし、現状を「変える」ことは容易ではありません。人は本能的に変化を嫌い、日々のオペレーションに追われる中で大きな舵を切ることは、現実的に極めて困難です。


それでも変革を成し遂げ、自発的に動くチームをつくるために、ジョン・コッター教授の「3つのステップ」が参考になるはずです。それは、マネジメントの仕事の進め方とは対極にあるアプローチです。

ステップ1:方向性の設定(Direction Setting)

「続ける」ためのマネジメントと、「変える」ためのリーダーシップでは、最初の第一歩が全く異なります。
マネジメントは、第一ステップとして「年度予算」などの短期的成果を提示し、それを踏破するための「緻密な計画」を作ります。
それに対して、リーダーシップは「方向性」を設定します。何かを変えようとするとき、チームには様々な壁が立ちはだかります。その困難を乗り越えてでも到達したいと思える「魅力的なビジョン(Vision)」が必要です。
前回の厨房の物語で言えば、「毎日決まった量の食事を作る計画」ではなく、「世界一、船員たちを元気にする厨房を目指す」という方向性のことです。
「そこに行けたら素晴らしい」と全員が心から願う旗印を立てること。それには、熱量だけでなく、現実の壁を打破するための戦略性や周囲が納得するための論理性も求められます。

ステップ2:人心の統合(Aligning People)

目指す先が決まった後の「人の動かし方」にも決定的な違いがあります。
マネジメントは、計画を作った後に「組織化と人員配置」を行います。 目指すべきゴールは“何度も通った道”の延長線上にあるため、向かうこと自体に疑問を持つ人は少ないでしょう。そのため、役割分担を明確にし、タスクを効率的に割り振る「交通整理」が中心となります。
一方で、リーダーシップではそうはいきません。新たな方向性がどれだけ魅力的であっても、人は簡単には変化を受け入れられず、不安や抵抗を抱きます。
ここでは、役割やタスクで人を縛るのではなく、これから向かうべき方向に向けて、人々の「心」を一つに編み上げていく作業が必要になります。ビジョンを繰り返し語り、対話を重ね、共感の輪を広げていくプロセスです。

ステップ3:動機付けと触発(Motivating and Inspiring)

そして最後が、目的地へ向かう道中での「実行の担保」です。
マネジメントは、計画通りに進むよう「統制と問題解決」を行います。 前回、お話しした「統制(コントロール)」の出番です。計画という“あるべき状態”から乖離が生じたとき、原因を追及して軌道を修正します。
しかし、リーダーシップにおいて統制は不向きです。「変える」ための道中では、計画通りに進むことなど稀です。嫌々ながらの参加や、淡々とした作業(ルーチン)の連続では、変革の荒波を乗り越えることはできません。
参加する一人ひとりが自らの意思で変化を熱望し、障壁を乗り越えるべく「エネルギーを爆発させる状態」を作る必要があります。
権限やルールによる強制ではなく、内発的な「自発性」を呼び起こすこと。これこそがリーダーシップの真骨頂です。

「続ける」と「変える」を使い分ける

「続けること(マネジメント)」と「変えること(リーダーシップ)」。その本質的な違いから、それぞれの仕事の進め方・アプローチは根底から変わります。

  1. 計画を立てるか、方向性(ビジョン)を示す
  2. 人員を配置するか、心を統合する
  3. 統制(コントロール)するか、動機づけ(モチベート)する


もし今、職場で「部下の自発性が足りない」と感じているなら、それは部下の能力の問題ではなく、アプローチの問題かもしれません。
無意識のうちに「マネジメントの3ステップ(計画・配置・統制)」だけでチームを動かそうとしていないでしょうか?
未知の課題に挑み、自律的に動く組織を作るためには、今日から「リーダーシップの3ステップ」を取り入れる必要があるのです。

サービス一覧を見る

コラム著者

児玉 教仁(こだま のりひと)

グローバルアストロラインズ株式会社 代表取締役

児玉 教仁(こだま のりひと)

ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー。
米国ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業後、総合商社を経てハーバード経営大学院MBAを取得。米国子会社の代表取締役などを歴任後、2011年に同社を設立。グローバルリーダー育成や組織開発のプロフェッショナルとして、これまでに1万人以上の受講生に向き合い、企業変革を支援している。

お気軽にご相談・
お問い合わせください