理想を追う職場にあって冷めた職場にないもの

前回までは、マネジメントとリーダーシップの本質的な違い、そして部下やチームを変えるための「3つのステップ」についてお伝えしました。


今回は、これらを日常の業務や自分自身の働き方にどう組み込んでいけばよいのか、管理職の「思考・行動の基盤」を担うオペレーション・システム(OS)という観点から紐解いていきます。

「忙しすぎて理想を追えない」本当の理由

現場の管理職の方から「日々押し寄せるタスクをこなすのに手一杯で、理想やビジョンを語る余裕なんてない」という声をよく伺います。
しかし、部下の自発性が生まれず、現実がなかなか変わらない本当の原因は、「多忙さ」や「現実の厳しさ」そのものではありません。


実は、あなたや組織を動かしている「OS」にあるかもしれないのです。
従来型のマネジメント型のOSでは、目の前のタスクを効率よく「こなす」ことや、計画からの脱線を引き戻す「統制」を思考の土台としています。
この考えのままチームを動かそうとすると、どれほど熱心に指導しても、部下は義務感で指示を待つ「作業者」にならざるを得ません。


対して、私たちが提唱する「リーダーシップOS」は、「こうしたい」という理想の未来(ビジョン)を起点とし、自分やチームの内なるエネルギーを解き放つことを土台とします。


ここで多くの方が抱く疑問があります。「リーダーシップOSに切り替えたら、日々のスケジュール管理や予算管理、リスク管理といったマネジメント業務は捨ててしまってよいのだろうか?」という問いです。
当然ながら、答えはノーです。どれほど素晴らしいビジョンがあっても、日々の実務が破綻すれば組織は立ち行きません。


必要なのは、マネジメント業務を捨てることではなく、「リーダーシップOSという強力な土台の上で機能する『アプリケーション(手段)』として再定義すること」なのです。

厨房の物語に見る「OSとアプリ」の動かし方

第2回のコラムで紹介した「船の厨房」の物語で考えてみましょう。
「決められた時間に、決まった量の食事を作る」というタスク処理が基盤(マネジメントOS)だった頃、現場は義務感に包まれ、「最低限のことだけやればいい」という冷めた空気に支配されていました。
しかし、「世界一、船員たちを元気にする食堂」という理想の未来に書き換わった瞬間、現場の景色は大きく変わりました。


ここで注目すべきは、リーダーシップOSへ切り替わった後も、マネジメントというアプリケーションは消えたわけではなく、むしろ以前より高い精度で機能し始めたという点です。


毎食時間通りに提供するための「計画作成」、効率を最大化する「役割分担」、トラブルを防ぎ品質を保つための「問題解決や統制」。


これら従来の実務はすべて、「世界一の食堂にする」という目的を果たすための強力なツール(アプリ)として、メンバー自身が主体的に回すものへと進化したのです。

「管理される側」から「未来を創る側」へ

思考の基盤を「マネジメント」から「リーダーシップOS」へとシフトさせると、部下と管理職の関係性が変わります。


目の前の作業を「こなす」だけの義務感から脱却し、理想を叶えるために自ら動く自律的なチームが生まれます。メンバーを一方的に「統制」して管理するのではなく、自走を促し、信頼と活気に満ちた組織へと変わっていくのです。


マネジメントというアプリを巧みに使いこなしながら、リーダーシップというOSでチームを動かす——。
それは、結果として管理職をより優れたマネジャーにするだけでなく、管理職自身を単なる「タスクの管理者」から「組織や人生の理想を考え、未来を創るリーダー」へと根本からアップデートしてくれるはずです。

サービス一覧を見る

コラム著者

児玉 教仁(こだま のりひと)

グローバルアストロラインズ株式会社 代表取締役

児玉 教仁(こだま のりひと)

ハーバード経営大学院 ジャパン・アドバイザリー・ボードメンバー、DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー アドバイザー。
米国ウィリアム・アンド・メアリー大学卒業後、総合商社を経てハーバード経営大学院MBAを取得。米国子会社の代表取締役などを歴任後、2011年に同社を設立。グローバルリーダー育成や組織開発のプロフェッショナルとして、これまでに1万人以上の受講生に向き合い、企業変革を支援している。

お気軽にご相談・
お問い合わせください